「ゆずきくん、毎日のように女の子から告白されてるね」
「…別に良いもんじゃないよ」
「それだけ、カッコイイってことだよ」
「…」
何にも嬉しくなかった。
急に騒ぎだして、うるさいだけの女子達なんかどうでもよかった。
「ゆずきくんて、俳優のシキに似てる」
「シキ?」
「うん。私、すきなの」
「…」
この時から、既に気づいていた。
自分が、彩に特別な感情を抱いていること。
家に帰ってから、食い入るようにその俳優の事を調べた。
今人気で、ドラマや映画に引っ張りだこのシキ。
「あら珍しい。柚月がそんな真剣にテレビ見てるなんて」
「…ねぇ、母さん」
「なに?」
「シキみたいになるには、どうしたらいい?」
「…柚月」
今まで全く興味なかった芸能界に、自分から足を踏み入れようとしていた。
