隣の席で青春くん



翌日だった。



「ゆずきくん!」



声で、また話しかけてきたのかと悟る。


少し言いすぎた、と心がかりにしていたのにー



読んでいた本から少し視線を上げて驚いた。




昨日とは全然違う服装に、バッサリと切った髪の毛。



いつもスカートを履いていたその足は隠され、クラスの男子と変わらないような格好。



2つに結んでいた髪の毛も、首にすら届かないほどになっていた。




「な…なんで」




「どう?男の子みたい?」




「は…?」




「これで、わたしと友達になってくれる?」



ここまで俺自身に興味を持ってくれた人は初めてだった。



髪は女の命なのよ、柚月



昔母さんが言っていたことをふと思い出した。





「何でそこまで…」



「ゆずきくんと、お友達になりたいから」



本当にそれ以外に理由がないような顔で笑う。




「…なんで?他に、友達作ればいいじゃん。僕じゃなくてもー」




「友達は1人じゃないとダメなの?」



「え?」



「わたしは柚月とだけ友達になりたいんじゃなくて、柚月とも友達になりたいんだよ」




えへへ、と笑うその子に何も言えなくなった。




…自分は、友達たった1人の為に見た目を変えるなんて絶対出来ないと思ったから。