「ん。佐伯さんはこれ使って」
新品の歯ブラシを出してくれて、それを受け取る。
「あ、ありがと」
シャコシャコ…
赤澤くん、寝ぼけてるのかな…首クラクラしてる。
歯を磨いた後、赤澤くんは目をシパシパさせて私を見下ろす。
「今何時…?」
「え、私がさっき見た時は…夜中の3時頃だったよ」
「3時……」
「だ、大丈夫…?」
「…クソ眠い。限界。早く寝よ」
グッと肩を抱かれる。
「え、あの…?」
近いんですけど…!!
いい匂いするし…
「赤澤くん、私はどこで寝れば…」
「何言ってんの…ここでいいでしょ」
「え!?いやそれは…!!」
「大きい声出さないで」
電気を消して、ベッドに横になる赤澤くん。
「早く」
ポンポン、と隣を開けてくれるけど、それどころじゃない。
それこそファンに殺されるよ…!!
「でも…やっぱり男女が同じ布団って言うのはまずいんじゃ…」
「俺は気にしないけど」
「わ、私が気にするの!」
「…めんど」
「え……っわ!!」
ギシッと言う音がした瞬間、強い力で腕を引っ張られる。
気づけば赤澤くんの腕の中にいて、寝ながら抱きしめられている状態。
「はい、おやすみ」
「お、お、おやすみって…!!」
力強くて離せないし、緊張がまさって眠気なんてどこかに行ってしまった。
逆に目、冴えてきた…
すぐに頭上からスースーと寝息が聞こえてきて、私だけ胸の高鳴りが気になり眠れず。
結局、体感で3時間くらいは腕の中で緊張しっぱなしだった。
