「あの子、学校で浮いてない?」
私の目の前に座ったお母さんが、紅茶を入れ直してくれる。
「え…?」
「ほら…あんな事してるから、学校では変装してるでしょ?」
お母さんが言うあんな事って、モデルの事…だよね。
「そりゃ、変装する理由も分かるのよ。変に周りを騒がせても、先生方や生徒さんに悪いしね」
本業は学生なんだから、とお母さんは付け足す。
「でも…ずっと学校休んでたし、友達も…居ないわけじゃない。少し心配でね」
「…」
「でも、彩ちゃん家に連れてきてビックリしちゃった」
「え?」
「あの子にも友達出来たんだなって。しかも、可愛い女の子の」
お母さんはムフフ、と目を細めて笑う。
「赤澤くんは…私以外にも、ちゃんと友達いますよ。男の子も、女の子も」
「そうなの?」
「はい。ちゃんと、赤澤くんを分かってくれている友達です」
「そう……良かった」
葵くんや、六花ちゃんのこと…お母さんは知らないのかな。
まぁ、赤澤くん…あんまり自分のこと喋らなさそうだもんな。
「そうそう。聞きたいことがあったの」
「え?何ですか?」
「彩ちゃんてー」
ガチャ
「佐伯さん」
部屋のドアが開き、赤澤くんが後ろから私の肩に手を置いた。
「あ…赤澤くん」
「先に風呂入っておいで」
「えー」
「母さん、着替えの用意」
「あ、はいはい。お姉ちゃんの服なら丁度居間の部屋にー」
「分かった。佐伯さん、行こ」
「えっ、あ、はい。ご馳走様でした!美味しかったです、凄く」
「はーい」
お母さんが言いかけたこと、何だったんだろう。
