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キーンコーン


チャイムが鳴り、教科書を机にしまう。


「佐伯さん」


不意に隣から聞こえてきた声にビクッとする。



「これ、昨日のプリント」



「……」



「?ほら」



「あっ、ありがとう……ございます」




yuzuに、名前呼ばれた…佐伯さんって。


あ…でも最初にフルネームで名前呼ばれたか。





「なんで敬語なの」


「え…だって、yuzuだし…」



「…その呼び方やめて。誰が聞いてるか分かんないし」



「あ、ご、ごめん。赤澤くん」



思わず謝ると、赤澤くんは少し口元を上げた。



「ねぇ、頼みがあるんだけど」




「へ?」




「放課後、屋上に来てよ」




「え、なんで…」



「約束ね」



そう言ってメガネの奥であった視線に、ドキッとする。



『変装しててもyuzuって分かるよ』



昨日の六花ちゃんの言葉が頭をよぎる。



…確かに、yuzuって分かっちゃうと、変装しててもyuzuはyuzuだ。



とんでもない人の隣になっちゃったよ…