手触りはゴツゴツしていて、冷たい。黒くて、艶やかななにか。
 艶やかな地面って、ないよね。
 恐る恐る振り返ってみると、黒いなにかの先端にツノのようなものが見えてます。
 ツノ~~~!
 あばばばば。
 叫びそうになる口を押さえ、漏れる絶叫をのみ込みました。
 すると不意にツノが動き、『先端』がこちらを振り返って──。
「そなたは誰だ」
 ぎゃ~! しゃべった! 大きく真っ赤な口が開いて、しゃべりました。おまけに黒ヒスイのような目でこっちを睨(にら)んでます。
「怪獣……っ! えっ?」
 怪獣がしゃべった。こわっ。
 私はとっさに逃げようとした……けど、手をついた先にはなにもなくて、バランスを崩しそうになりました。驚いてよく見れば、黒い地面は幅二メートルもない細長さで、なんとまだ空を飛んだまま。危ない。今落ちるところだったわ。