ならば先手打って『まっずいもの食わせてさーせんしたっ!』って謝っちゃおう。でもって脱兎のごとく逃げ……あ、待てよ。逃げるもなにも、竜王様の逆鱗に触れてお城追い出されるんじゃない? メイドさんたちの話からしても、二度目はないらしいし。
 ま、その時はその時だ。

 そしてとうとう、竜王様のいる部屋に到着しました。
 見上げるほどの大きな重々しい木の扉を、フォーンさんは「失礼いたします」と言うと、静かに開けました。さっきまでのイライラモードはどこへやら、いつの間にか落ち着いた執事モードにスイッチしているのには驚いたわ。
「例の娘を連れてまいりました」
「ああ、そこへ」
 部屋の奥の方に向かって声をかけるフォーンさんに応えたのは、耳触りのいいイケボ……バリトンボイス。あれ?
「かしこまりました。ほら、行きなさい」
「はい」