もうダメだ。側近! 誰か止めてよ、王がご乱心ですよ! ……って誰もいないわ。
 万事休す、と天を仰いだ時。
「余は、どうやら胃袋を掴まれたようでな」
 ニヤッと笑う竜王様。
 ええ……そんなことでお妃様を決めていいんですか。
「それに」
「それに?」
 またじっと見つめてくる黒ヒスイの瞳。途端に感じる、強い光。
 まただ。前にもこんな光を感じた……。
 これはなんですか? そしてなにを言いたいんですか?
 竜王様の次の言葉を待ったのだけど。
「……なんでもない」
「スッキリしないじゃないですか!」
 中途半端に寸止めやめて。
「まあ、よいではないか」
「よくないですよ」
 私が恨めしげに見ても笑うばかりで、どうやら続きを話す気はなさそうです。
 まったくもう……ふふふ、竜王様ってば。
 ああ、私ってば知らないうちに、どえらい人の胃袋掴んじゃったようです。