さらっとスルーしておけばよかったものの、バッチリ聞こえてしまった『妃』って。
『妃』って『奥さん』じゃないですか。
 竜王様の奥さんですって? 私が? ありえない!
「妃、って奥さん、ですよね? 竜王様の?」
「そうだ」
「いやいやいやいや。よ~~~く考えてくださいね? 私ヴァヴェル人。あなた、竜王様」
「そうだが?」
「私、下っ端メイド。あなた、王様。雇用主。身分差よくない。あとで苦労します」
 焦るあまりにカタコトみたいになってしまったわ。
 なのに竜王様は涼しい顔して。
「問題ない」
 めっちゃ問題ありまくりですってば。
「ヴァヴェル人である以前に、私は庶民です。なんの礼儀も教養も身につけてません」
「それは今からでも学べる」
「ぐっ……。み、身分差! 身分差はいろいろ価値観の違いとなって現れてきます。価値観の違いを埋めるのはなかなか難しいと思われます」