32・売り出し大作戦
「ボルドーから聞いていた通り、とてもおいしい」
「変わってるが、風味がいい」
 お父さん──プルシアさんが帰ってきたので、お母さん──シャトルーズさんと一緒にサティーバにぎりとお味噌汁を食べてもらいました。
「これが傷物海藻から取れたスープ……」
 シャトルーズさんがしみじみと味わっています。
「オニギリも食べやすいなぁ。弁当に向いてそうだ」
「そうね、パンばかりじゃ飽きちゃうものね」
「そんなことはないが、たまには変わったものもいいだろう」
「ふふふ、そうね」
 ちょっと拗ねたふうを見せたシャトルーズさんに慌てるプルシアさんからは、仲がいいことが伝わってきます。
 大柄でがっしりしたプルシアさんは一見怖そうだけど、それは本当に見た目だけ。
『今日からしばらくうちに滞在するレイラさんよ』と、自分不在の時に勝手に決められた居候にも反対することなく、『俺はあまり家にいないから、自由にするといい。気遣いも無用だから』と、あっさり受け入れてくれました。
 今までこんな普通になじめたことがないので、ちょっと感動しました。ボルドーさんが『温かくて優しい人たち』と言っていたの、納得です。
 プルシアさんも、ボルドーさんと同じように、傷物海藻を使い物にしてくれてありがとう、とお礼を言ってくれました。