ビーチリゾートからはかけ離れた冷たい海だけど、そのおかげで身のしまったおいしい魚が獲れるんだとか。荒波にもまれて海藻も歯応えのあるおいしいものになるし。
 温暖な気候ではないけど、村の人々は温かく優しい。
「天気のいい日に水面がキラキラ輝くのが、とっても綺麗なんですよ!」
 ビーチリゾートのようなきらびやかさはないけど、聞けば聞くほど魅力的です。
「ますますいい! あ~、行ってみたいなぁ」
 さっきの『行くあて』じゃないけど、竜王様でさえも知らないようなど田舎に行くっていうのもよさそう。
 すると。
「よかったら来てみますか? 母も会ってみたいと言ってましたし」
 商人さんから、まさかのお誘い。
「へ?」
「レイラさんの都合さえよければ、ですけど」
「本当になにもないところですけどね」
 そう言ってふたりはニコニコしています。
 ちょっとこれ、願ったり叶ったりじゃない?
「そ……そうですね……。モーブさんに相談してみます」
「僕たちは明日帰るので、その時ご一緒しても。ああ、でもべつに明日じゃなくてもいいですけどね」
「できるだけ早く行きたいです!」
「?」
 私の勢いに、ふたりは首をかしげました。
 なんとか当面の行くあての目処がついたようです。