あれ以来いつも傷物海藻を分けてくださるので、お礼代わりにおにぎりとお味噌汁をお出しすることにしているんです。
「まさか売り物にならない海藻からこんないい味が出るなんて。ね、あなた」
「ほんとうに。母もこの話を聞いたら『食べてみたい』って言ってました」
「お母さんはなにをされているんですか?」
 商人さんのお父さんは、漁業をやっていましたよね。じゃあ、お母さんも漁業関係者かな?
「母は村で料理屋をやってます。父の獲ってきた魚を使った料理が自慢なんですよ」
「そうなんですか」
 獲れたてで新鮮な魚介を使った料理……プリプリの刺身、カルパッチョ。塩焼きに煮付け。うわぁ、想像しただけでもよだれが出そう。
「いいなぁ、海の近くの村……」
「なにもないど田舎ですけど、海の綺麗さは世界一だと思います」