27・混乱に乗じて
「長旅お疲れさまです。竜王はぐっすり眠っています」
 はい、口から出まかせ~。竜王様、すぐそこにいるし……というのは置いといて。
 竜王様たちが隠れたのを確認してから、私は扉を開け、ヴァヴェル兵を招き入れました。
「手はずの方はどうだ?」
「バッチリです。上々すぎるくらいです」
「そうか。それで、さっきからこのあたりでいい匂いがしてるのはなんだ?」
 辺りをうかがってキョロキョロしている隊長らしき人が、鼻をクンクンと動かしています。
 こっちから言いだす前に気づいてくれるとは。
「いいところにお気づきですね! 転移の魔法での移動とはいえ、お疲れだろうと、温かいスープをご用意しておきました」
「なんと」
「ですので、今のうちにこれを食べて体力回復してから襲撃してください」
 そう言って私は次々と食器にスープを注ぎ、門から入ってくる兵たちに配りました。