庭師さんは私に念を押すと、茂みの中に入っていきました。

 月明かりはほとんどなく、鍋を作るための薪の火だけを頼りに調理します。
 いつも以上に大量なので、敵が現れるまではトープさんたちにも手伝ってもらっています。
「それにしてもいい匂いですね~」
 昆布のような海藻が、鍋の中で踊っています。濃いめの方がいいかと思って多めに入れているけど、それでもいつもと香りが違うような?
「香りが立つ方がいいと思って、今日はいつもよりちょっといい材料を使ったからね」
「わぁ。もったいない!」
 そうか、高級食材だったのか。というか、敵に与えるにはもったいなくない? もっと切れ端でもよかったのに。まあ、効果がある方がいいか。
 辺りに漂う出汁のいい香り。やばい、私がお腹減ってきた。
「こう……扇いでみます? もっと香りを拡散させるために」
「ああ、いいね。誰か、適当に扇いでおくれ」
「はい」