周りからの痛い視線、トープさんの沈黙。そろそろ居たたまれなくなってきた頃。
「私はライラを信じるよ」
　トープさんがはっきり言いました。
「え？」
「本気ですか？」
「ヴァヴェル人ですよ？」
　私が口を開く前に、メイドさんたちが口々に叫びました。
　いや、私もびっくりだわ。トープさん、私を信じてくれるの？
　ハッとトープさんを見ると、いつも通りの笑顔で私を見ていました。
「だってさ、もし本当にライラがヴァヴェルのスパイだったら、みんな、とっくの昔に毒を盛られていると思わないか？」
　そう言ってトープさんは、夕飯の仕込みの終わった鍋のスープをひとすくいし、カップに入れて食べました。
「最初こそフォーンが毒味だなんだと言ってたけど、途中からそんなことも忘れておいしいおいしいって食べてただろ。みんなだって、疑ったこと、なかっただろう？」
　メイドさんたちを見回すトープさん。
「たしかに……」