コクンと肯いたけど、むしろうなだれたに近い。
「え?」
「じゃあ、ライラはスパイってこと?」
「嘘でしょ……」
 周りのメイドさんたちのざわめきが聞こえてきます。
 たしかに、話の内容からすると私はスパイですよね。周りからの視線が刺さる。痛いです。まるで最初の頃、ここに来たばかりの頃のよう。
 しかしトープさんは私をじっと見たまま、微動だにしません。
「トープさん?」
「いや、そもそもライラが竜王城に侵入できているかどうか、女王は知らないだろう?」
「それが、バレてると思われます」
「なぜだい?」
「それは──」
 竜王様の婚活パーティーの日。ヴァヴェルの女王様は私を見て『ごきげんよう』って微笑みました。あの時の私はその意味がわからなかったけど、今ならはっきりわかります。あれは『女王様の計画』が『うまくいっている』という確信の笑み。