「ほら、竜王国って悪い国じゃない?」
「はい」
 ヴァヴェル人は、『竜王国は悪い国!』『ヴァヴェル王国の領地を横取りした』などなど、とにかく『竜王国憎し』と教育されてきました。だから女王様の言うことに、素直にうなずきます。
「でもね、竜王が強いから、うちの国は負けてばかりなのよ」
「そうなんですね」
「外から攻めてダメなら、内側から崩すのって、効きそうじゃない?」
「そうですね」
 内側から崩すって、どうやるんだろう。怖い笑顔の女王様の言葉を遮ることはできないから、相づちだけ打っているけど、女王様の言いたいことが全然わからない。
「そこでね、あなたの料理の腕を見込んでお願いがあるの」
「料理の腕?」
 また出ました。『お願い』という名の『命令』。やっとここからが本題か。