そのまま二十数年間、ごくごく普通のヴァヴェル人として生活してきました。
 前世の記憶はなかったものの、料理の腕だけは認められて、ヴァヴェル王国でも王宮の料理人として働いていました。もちろん下っ端。
 竜王国以上に殺伐とした環境で、せっせと働いていたある日のことでした。

***

「女王陛下がお呼びです」
 とて~も厳しくて有名な女官長に呼び出しを食らいました。
 マジか。私、なにかやらかしたっけ?
 この国を統べるのは、厳しい女王様。年齢不詳、噂ではアラフィフ、でも美魔女。そんな女王様のもとに呼び出されるのは、『めちゃくちゃ褒められる』か『クビ』のどちらかという究極の二択なのです。
 自室が汚部屋っていうことだけでクビにならないよね? ちょっと人よりドジだからっていうのもないよね? 褒められるようなことはした覚えがない、むしろクビにされる覚えの方がある……!