「普段とはいえ仕事は仕事ですから、毎日きちんとお化粧した方がいいのかしら?」
 思わず心の声が漏れてしまうと、竜王様は少し笑いました。
「いや、しなくても十分だ。化粧をするといつも以上に華があるな、と思ったけどな」
「華?」
 思いもしなかった言葉に竜王様の顔を覗き込んだら、ふいっと逸らされてしまいました。これは、褒めてもらった……と思っていいの、かな。
「まあ……うむ……。ああ、そうだ。ライラは市場になにをしにきたのだ?」
 少し顔を赤らめた竜王様が、話題を変えてきました。
「何用って、トープさんに……あっ!」
 そうだすっかり忘れていた。私、トープさんにお使いを頼まれていたんだった。こんなところでだべっている場合じゃない!
「どうした?」
 急に素っ頓狂な声を出して慌てた私に、竜王様も驚いています。
「私、香辛料を買ってきてと頼まれてたんです」
「そうか。その店はすぐそこだぞ」