16・遭遇
「香辛料を買ってきてくれないか?」
 調理中のトープさんに声をかけられたのは、朝のご飯タイムが終わってホッとひと息ついたタイミングでした。
「香辛料ですか?」
「ああ。切らしてたのには気づいていたんだけど、パーティーのバタバタですっかり買い忘れてたんだよ」
 そう言うトープさんの眉が下がっています。きっと昼食のことを考えている時に必要だったことを思い出したんでしょう。
「了解です。それで、どこに行けばいいんですか?」
「おっと、そこからだったね」
 みなさんは自分のお仕事で手いっぱいだから、城外に買い出しにいけるとしたら私くらいのもんなんですが、よく考えてみれば私ってば、竜王城から一歩も出たことがないんですよね。
 このお城だって、『めっちゃ大きいな』くらいの認識はあっても、外から見たことがないから客観的にどれくらいの大きさなのかわからないし。
 今さらながらの事実に、トープさん、苦笑いです。