運ぶお手伝いはもちろんマゼンタ。私は触りませんよ!

 最大限大急ぎ、しかしお味噌汁はこぼさないという離れ業で、竜王様のもとに急ぎます。
「それで、これはどこに運ぶの?」
「竜王様の私室よ」
「そんなところに入っていいの!?」
「もちろん私たちが入れるわけないわよ。入り口のところで竜王様付きメイドに交代するわ」
「わかった」
 竜王様の私室とか、めっちゃびっくりしましたよ。でもメイドさんに渡すだけでいいなら気は楽ですね。
 ──なんて思っていた自分は甘かった。
 私室にいた竜王様は、さっきまでのどこか冷たそうな近寄りがたい雰囲気は消え去っていました。シルクのような光沢が美しいネグリジェのようなものを着て本を読んでいます。リラックスしているだけというのにイケメンの色気だだ漏れとか、どんだけ補正がきいているんだか。
「まだ片づけが残っているだろう。ライラ以外は下がってよいぞ」