15・気まぐれな注文
 結局、竜王様はパーティー終盤に四人のお嬢様とダンスをしただけで終わってしまいました。もちろんその中にヴァヴェル女王様は含まれず。
 しかも竜王様はダンスが終わるとすぐに閉会宣言をしてしまい、さっさと退出しちゃったし。ほんとに婚活やる気ないんですね。

 竜王様がいなくなると、お客様たちも帰る支度を始めました。時刻は深夜零時をとっくに過ぎているので、シンデレラなら魔法が切れちゃっている時間です。
 お客様を送り出すのは上級メイドさんやフォーンさんたちのお役目で、私たちのような下っ端メイドが撤収の中心です。私も、ボーッと見ているだけでは忍びないので、極力邪魔にならないよう、片づけ終わったテーブルを拭いています。
「これなら邪魔にならないし~。あいたっ!」
 調子に乗って鼻歌を歌っていたら、テーブルの脚に足の小指をぶつけました。地味に痛いやつです。
「くぅぅぅぅ……」
「ライラ! どうかしたの? 気分でも悪い?」
 痛みに耐えかねてその場にしゃがんでいたら、マゼンタが駆け寄ってきてくれました。
「足の小指を打っただけ」
「なんだ心配して損したわ」
「そんなこと言わないでぇ~! あれ? マゼンタはこっちになにか用事?」