思わず見入ってしまいそうですが、いかんいかん、私は仕事中! キリッと顔を引き締め、いざ! ……となると最初の予感が的中で、忙しく会場内を右往左往することになりました。
 飲み物が欲しいというお嬢様には、飲み物担当のメイドさんに『あのお嬢様が果実酒欲しいそうです』と伝え、小腹が減ったというおじさまには『あちらのお客様がなにか腹にたまるものを、とおっしゃってます』と伝え。自分は決して物に触らず、あくまでも会場を見回して不備がないか、とか、足りないものを報告したり状況の確認のみにとどめて。
 自分ではなにもしない私のことを見て、きっと『あのメイドはなにをしているんだ?』と思われているかもしれませんね。だってきつく言い渡されているんだもの、仕方ない。
「そこのあなた。飲み物を持ってきてくれるかしら?」
「喜んで! ……じゃない。かしこまりました」