私が準備しているのを覗いて、トープさんが聞いてきました。
「そうなんですよ。さっきフォーンさんががっつり食べていっちゃったんで」
「あいつは……」
 トープさんが、やれやれというように肩をすくめました。
 余熱が完了したので天板をセットし、焼き始めました。あとは待つだけです。そうそう、厨房から出るので、トープさんに断りを入れておかないと。勝手に出ていったら心配されてしまいます(なにか破壊していないか、という方向で)。
「これが焼けたら、ちょっと執務室まで持っていきますね」
「執務室?」
「はい」
「どこの?」
 トープさんが首をかしげています。
「どこって、たくさんあるんですか?」
「ああ。竜王様はもちろんのこと、側近たちにはそれぞれあるし、ほかにも重鎮の──」
「そんなにあるんですか」
「ああ。だから、どこのだって聞いたんだよ」