普段キビキビと働く完璧主義の人なので怖い人かな、と思いがちですが、実はウィスタリアさんは繊細で優しい人なんです。部下を注意しても、後からフォローするいい上司なんです。ああ……竜王城がどんどんホワイト化していく。
「量が増えただけで、手間が増えたわけじゃないから大丈夫ですよ」
 私は笑って答えたけど、ウィスタリアさんのダークブルーの瞳が私をじっと見てくるのは、嘘をついているかどうか見抜くため?
「……ならいいけど。本当に、みなの顔からクマが消えてホッとしているわ」
「そこまで疲れてたんですか!」
「……まあね」
 厨房のメイドさんたちだけじゃなかったんだ。たしかに生気がないなぁとは思っていたけど、みんな同じだったんですね。
「私はみなさんのお役に立ててうれしいんです。だから気にしないでください。むしろみなさんがお仕事している間、私、暇なんで」