声の方を見ると、やっぱり、そこにいたのはさっきの怪獣!
 怪獣が、地面に横たわる私を見下ろしていたのですよ。
「ぎゃ~~~! 怪獣!」
 いきなりの登場に今度は抑えきれずに叫んでしまったら、怪獣がその黒ヒスイの目をすがめてじとんとこちらを見てきました。
「怪獣とは失礼な。余は『竜』である」
『怪獣』と呼ばれたのがいたくお気に召さなかったようですね、すみません。
「竜、ですか」
「ああ」
 言われてよく見れば、たしかに怪獣じゃない、かも。
 だって、私の知っている竜は、緑色の鱗に覆われていて、長い髭があって、たてがみがあって、蛇のように長い胴の生き物。しかし目の前の自称『竜』は、艶やかな黒い鱗に、黒いたてがみ。鋭い爪の生えた四本の脚、そして長い胴。──あ、そっか。私の知っている『竜』のモノクロ版だ。
 いや、漆黒の竜、という方がしっくりくるかも。
 ああ、でも竜て。