神山さんより 一足先に 食堂を出て 

私は 実家の母に 電話を掛けた。


「やっと その気になったね。」

と母は 笑いを含んだ声で言う。

「久美子 お金 ないでしょう。午後にでも 郵便局に行って 振り込んでくるよ。」


「お母さん 心配じゃないの?」


あまりにも 前向きな母に 私は 逆に 尻込みしてしまう。


「栄二さんと 一緒に居る方が よっぽど心配だよ。久美子だって まだ若いんだから。これから 十分に やり直せるのに。いつまでも ズルズルしているから。そっちを心配してたんだよ。」


母の言葉に 私は 胸が熱くなり 涙が 滲んでくる。


「いつまでも 心配ばかりかけて。親不孝な娘で ごめんね。」



「ホント。でも 久美子の心配が なくなったら ポックリいっちゃうから。ちょうどいいんだよ。」



多分 栄二は すんなりと 離婚に応じるとは 思えない。


裁判所に 調停を依頼することに なるかもしれないと 私が言うと



「役所の 法律相談に行って 弁護士さんを 紹介してもらうといいよ。隣の清美ちゃんも そうやって 離婚したらしいよ。」


母の元気に 救われて 勇気をもらった私。



翌日 私の口座には 当面 必要なお金が 振り込まれていた。