直哉は そのまま 席を立って 階段を駆け上がる。

「直哉!」

と叫んで 追い駆けようとする栄二。



「パパ。止めて。」

私は 栄二の腕を掴んで 引き戻す。


「直哉 難しい年頃なのよ。頭ごなしに 言わないで。後で私が よく言っておくから。」



栄二は 自分が 不利なことを わかっている。

引っ込みが つかないだけだから。



「お前が そうやって甘やかすから 直哉は 悪くなるんだ。」



「パパは そう言うけど。直哉は 素直よ。」



私は 黙って 床に散った食事を かき集める。


『鳥のもも肉600グラム。約800円の損失。』


膝を折って 料理とお皿を分けながら。




私は 栄二のことも 直哉のことも 考えていなかった。



栄二が 乱暴にドアを閉めて 

リビングを出て行く音を 背中で聞きながら。