高校2年になってすぐ 直哉は 栄二に アルバイトの話しを 切り出した。


「お父さん、俺 来週から コンビニで バイトするから。」

一瞬で 栄二の 目の色が変わる。

私も直哉も マズいと思った。


「誰が いいって言ったんだ。まだ高校生だろう。」

「友達もみんな バイトしてるし。」

「勉強は どうするんだ。お前 成績だって 良くないだろう。」

「勉強もするよ。」


私は ハラハラしながら 2人のやり取りを 聞いていた。


助け船を 出したいけれど。

余計に 栄二を 怒らせるから 私は 何も言えない。


「駄目だ。許さない。」


栄二がそう言った時 直哉は


「だったら 人並に 小遣いよこせよ。」

と初めて 栄二に逆らった。


「直哉。」


私が 言うより早く 栄二は テーブルの上の食器を 払い落す。


ガチャーンと 派手な音をたてて 割れるお皿。


床に散らばる 唐揚げを見て


『今日 カレーにしなくて良かった』



と思った私は 心を氷らせることに 成功していた。