「篠田さん、悩みない?俺に 相談してみてよ。」



社員食堂で Aランチを 食べながら 富永さんに 言われて。


私は 全く 警戒せずに 笑ってしまう。



「私 悩んでそうに 見えますか?」


「うん。こんなに綺麗なのに。何か 寂しそうでさ。ずっと 気になっていたんだ。」



プラスチックの湯飲みから 薄いお茶を飲みながら。


絶対に 口説かれているなんて 思わない。



「ウフッ。もしかして私 口説かれていたりして。」


だから私は 逆に 富永さんを 煽るような言葉を 言ってしまった。



「ねぇ。俺が ずっと篠田さんのこと 気にしていたの 気付かなかった?」


富永さんは 急に 真面目な顔をする。


「冗談は 止めて下さい。いくらオバさんでも 怒りますよ。」


私は ハッとしたけれど 冗談で済まそうと笑う。




「こっちこそ 怒るよ。冗談じゃないから。」


富永さんの目は 切ない甘さを 滲ませる。




甘い 居心地の悪さに 私の胸は 熱く ときめいてしまう。




23才で結婚して。


それ以来 一度も こんなこと なかったから。