一方で岸田くんは近くの席を借り、私のすぐとなりにやってきたのだ。
「それはね、渡辺さんと連絡先を交換したいと思ったんだ」
にこにこ笑う岸田くんに対し、私は固まってしまう。
岸田くんと連絡先を交換する……?
そんなの周りの人たちがなんて思うかわからない。
「ご、ごめんなさい……私、連絡先は……」
「やっぱり彼氏がいるから?」
「え……」
「ガードが固い理由。やっぱり彼氏がいるの?」
慌てて首を横に振る。
そんなわけない、私に彼氏などいないというのに。
「岸田、あのねぇ」
「じゃあ俺と友達になろう」
「と、友達……?」
「その証としての連絡交換だよ。
どうかな」
ここは折れるしかないのだろうか。



