「だよね、渡辺さんは一切穢れを知らなさそうだし……じゃあ本当に虫刺されかなぁ」
どこか不思議そうな岸田くん。
けれど私は意味を理解できていない。
「こんな純粋な彩葉に、キスマークつけるようなエロ男がいるわけないじゃない」
「確かにそうだね。なら気のせいか……」
「……?」
結局、次の授業の先生が教室にやってきたのをきっかけにこの話は終わった。
それぞれが席についたところで、ふととなりに座る悠くんのほうを向けば、彼も私を見ていたようで。
パチッと目が合ってしまった。
「……ふっ」
そして悠くんは口角をあげ、意地の悪い笑みを浮かべたけれど、その笑みの意味を理解するのはもう少し先のことだった。



