「お前はなに頼むか決めたのか?」
「あ、ううん……まだなにも……」
ダメだダメ。
悠くんは私との関係を隠すために“お前”と呼んでくれているだけ。
わかっているけれど、その呼び方はやっぱり好きじゃない。
「ん、どれにする?」
「ゆう……っ、清水くんは決めた?」
それに対して私は、油断するとすぐに“悠くん”と呼んでしまいそうになる。
「俺もまだ」
「そ、そっか……」
悠くんと一緒にひとつのメニューを眺める。
どれも美味しそうで悩んでしまう。
「うーん、オムライスとパスタ……ハンバーグとピザも美味しそう……」
「ほとんど全部だな、それ」
「どうしよう……」
「渡辺がふたつ、好きなの頼めば?」
「そ、そんなに食べれないよ」
「俺と分ければいい話だろ」
「……あっ、その手があったか!」
悠くんと分けっこすればいいのだ。



