「んんっ……」

息苦しくなったのか、彩葉が俺の服を掴む。
頬は赤みを帯びており、ぼーっとしている。


好きな相手とするキスとは、こんなにも気持ちを高ぶらせるのだ。


「もう少し危機感持てよな。
じゃないと手を出したくなる」


今までは耐えてこれたのだが、一度彩葉に手を出したことにより、理性が保ちにくくなっていた。

というより、嫌がらない彼女を見て“我慢しなくていい”と思うようになったのかもしれない。


「ふふっ、悠くんが悠くんじゃないみたい……うん」

一度力なく笑った彩葉は、そのまま俺に寄り添って再び眠ってしまう。

きっと夢の中だと勘違いしたのだろう。


「はぁ……」

どれだけ俺には無防備なんだ、彩葉は。
幼なじみ以上のことをしたはずなのに、彼女はまだいつも通り接しようとしている。


どうやらこの曖昧な関係はしばらく続きそうであった。