その無邪気な笑顔に甘えたがりな性格の裏では、中学の出来事がトラウマになって消えていないのだ。 「……彩葉」 彼女の頬を指で撫でる。 俺に対しての警戒心がひとつもない彼女が、どうしようもなく愛おしい。 今度はその唇に触れる。 柔らかなそれに、キスしたいという衝動に駆られてしまう。 早く彩葉を独り占めしたい。 だが焦りは禁物だ。 ようやく彩葉が意識し始めたのだから、ここは慎重にいくべきである。 ただ、彩葉の前の席である岸田という男はいろいろと面倒くさい。