やっぱり悠くんのそばが一番落ち着く。
私の気が済むまで甘やかしてくれるこの時間がたまらなく好き。


「悠くん、いい匂い……」
「彩葉って犬みたいだな」

「犬……?」


ふと顔を上げると、悠くんは目を細めて笑う。
普段のぶっきらぼうな彼からは想像できないほど、優しい表情だ。

悠くんは私の頭を撫でたかと思うと、頬に手を添えてきて。


「そう、飼い主に甘えたがりの犬。
しっぽ振って近寄ってきそう」


小さな笑みをこぼす悠くんは楽しそうだけれど、私はあまりいい気がしない。

なんだかバカにされているようだ。


「別にいいもんね、犬でも」

わざと唇を尖らせるけれど、悠くんは何も言わずに頬を指で撫でてくる。


「悠くん……?」
「なんだよ」

「ううん、なんでもない!」


少し様子が変だと思ったけれど、名前を呼んだときにはもう、いつも通りの悠くんに戻っていた。

気のせいかと思いつつ、私はふたたび悠くんに抱きついた。