けれどまったく頭に入ってこない。
理由はただひとつ、となりにいる悠くんに意識がいってしまうからだ。

悠くんの存在が気になってしまい、なかなか集中できない。


「じゃあ今から練習問題を解くように。
今日は確か渡辺からだったな」

「あっ……はい」


最悪だ。

数学の先生は練習問題を解かせたあと、必ず出席番号順に当てていき、黒板に書くよう指示するのだ。


前回の授業では私の前の人が当たって終わったため、今日は私からという悲劇。

さらにほとんど授業内容が頭に入っていないため、問題の意味すら理解できない始末。