「教科書、忘れたから見せてもらおうと思って」


どこか冷たく聞こえる低い声。
そんな悠くんは、なぜか私を見つめていて。

嫌な予感がさらに膨れ上がっていく。


「なんだ清水、教科書忘れたのか」
「……はい、なので渡辺に見せてもらいます」

「そうか。渡辺、すまないが見せてやってくれ」


数学の先生もそのように頼んできたのだから、拒否権など私にはなかった。

周りが少し騒がしくなる。
注目を浴びてしまったのだ。


周りの反応が怖くて、思わず俯く。


「じゃ、じゃあ清水はあたしの使いなさいよ!
あたしが岸田に見せてもらうし……」

「めんどくせぇだろ、そんなの」


美咲ちゃんが助けようとしてくれたのに、悠くんはそれを受け入れずに机をくっつけてきた。