そして約20分後。



「いっただっきまーす」


「いただきます」



ようやく人生4度目くらいのラーメンにありついた。


麺は啜れないから箸で持ち上げ、汁が飛ばないよう細心の注意を払って口に運んだ。


うん、美味しい。


スープがストレートの麺に絡まってしっかり味がするし、のど越しもいい。


スープはあっさりすっきりで万人受けする味。


今、すっごく幸せ...。


満たされてる感じ。



「さあや旨いか?」


「すっごく美味しいよ。...って黒羽くんまだだったの?」


「いやぁ、ちょっと拒絶反応が」


「ちゃんと食べきらなきゃダメだよ。桃さんの前でそんな姿見せたら幻滅しちゃうよ」


「分かった分かった。ちゃんと食べるよ。ふ~...ふ~」



猫舌か。


そりゃそうだよね。


普段熱いもの食べないもんね。



「さあや、ふ~ふ~してくれ。そしたら食べる」


「ワケわかんない。黒羽くん何歳児?」


「17歳の赤ちゃんだ」


「あはははは!何それ?あははははっ」



笑いの神様が降りてきた。


私はラーメンが伸びるのも気にせず、周りの目も気にせず笑った。


笑いたかった。


こんなに笑うのはいつぶりだろう。


あぁ、あの時か。


ポッキーゲームの変顔。



「さあやのベストスマイル激写!」


「恥ずかしいから止めて」


「ばっちり撮らせてもらった。待ち受けにしよ」


「いやいやほんとに止めて」


「やめてほしいならふ~ふ~な」


「最悪」



黒羽くんは意地悪だ。


だけど、面白い。


私を笑わせてくれるのはいつも黒羽くんだ。


人よりちょっと、いやかなりズレていてへんちくりんな黒羽くんにいつまでもなれず笑ってしまう私がいる。



「さあや、どーすんだよ」


「やるよ。やるから待ち受けにするのはやめて」