遡ること1ヶ月前。


私は校長室に呼ばれた。何で呼ばれたか分からないまま校長室に入ったら、学年主任、教頭、担任までいた。


その並びを見た瞬間、察した。


あ、西野くんのことだと。


そして、その事実がハッキリとなる。


「七瀬先生、電話で何度も七瀬先生と3-3の西野颯が付き合っているという匿名の電話がここ最近何本も入りまして、少し調べました」


「はい」


「そしたら、あなたが西野の部屋に入ったり、西野があなたの家に入ったりするのが確認されました。説明して頂けますか?」


『勉強教えてました』って言えば誤魔化せる。


でも、嘘を付きたくなかった。


生徒に恋をして付き合っているのは事実。


最初は教師を辞めたくないからって消極的だったけど、颯のいろんな面を触れる度に颯のことが好きになっていつの間にか教師であることを忘れてしまうほど颯を好きになっていた。


だから、私はもう『教師失格』なんだ。


でも『教師』を捨てても颯の隣にいようと考えていた。


今更恐れることではない。


「西野くんと付き合っているのは紛れもなく事実です」


「本当ですか?」


「はい、今年から付き合っています。」


「七瀬先生、それ相応の処分が下りますよ、それでもよろしいんですか?」


「私は覚悟しています、でも西野くんは私の生徒でもありますし受験生です。せめて西野くんは高校卒業をさせてあげてください。」


「後で報告します、下がってください」


ーーー3日後


「処分ですが、七瀬先生はまだ若い優秀な教師です。でも生徒との交際は許されるものではありませんし見過ごすわけにはいかないんです。ということで冬休みのタイミングで転任ということでよろしいですか?そして西野はこのまま高校卒業させます」


「分かりました」


この処分がされた日、私は1人で家で宅飲みをしていた。


これからどうすればいいのかずっと考えていた。


お酒は強くないけど、お酒を飲みながらでも自分で何度も考えて考えた。


その答えが、西野くんから離れることだった。


正直、私が西野くんといるのが辛くなっただけで、西野くんは何も悪くない。


そして待ちに待った愛する人の、西野くんの合格報告。


本当に嬉しいよ、教師辞めてよかったかなって思ってる。


私は遠い所に行って自分なりにまた頑張っていくから、西野くんも頑張ってね、そう思いながら抱き締めた。


颯からしたら受験合格して嬉しいっていう気持ちだけど、私は『ごめんね、ありがとう』って気持ちで抱き締めて体を重ねた。