私の家に着いた。夜9時。颯が私の家で泊まることになった。
最初は寮に送ろうと思ったけど、
「3日間はお泊まり許可出てるし泊まりたいな〜」
と甘えられ、泊まることになった。
まぁ、私も実際嬉しい。
家に着いて、すぐお風呂を入れて、体を温める。
頭も心も体も温まって上がって、テレビを見る。
丁度好きな俳優さんがドラマに出ているのでテレビを見る。
このドラマは男性と女性は刑事で愛し合いながらも2人の共通した過去を暴いていくサスペンスラブストーリー。
1話から見ないと納得しないタイプだけど、ここドラマは途中から見ても面白い。
珍しく見入っていたら、着信音が鳴る。
電話帳に登録してない電話番号。誰だろう。
「もしもし?」
「美波、お久しぶり」
この声は、、、
一声だけでも蘇る過去と顔。
「裕太、だよ、ね、」
「覚えてたんだな」
横山裕太。私と同い年だから25歳。私の元カレ。
「なんで電話してきたの」
電話なんてして欲しくなかった、いや、2度と顔も見たくないし連絡も取りたくなかった。
私と裕太の出会いは少しロマンチックだったと思う。
大学1年生の時に大雨が降って、傘を持ってきてない私は外に出れなかった。
ずっと人文学部棟の入り口で待っていたら、裕太が私に話しかけて来て、傘を貸そうかと聞いてきた。でも私はいらないって断った。そしたら雷も酷く今日中には止まない可能性があるから相合い傘でも家に送ると言われて送ってもらった。
相合い傘って言ったけど、裕太はほぼ体は出ていてびしょ濡れだったし、私の家と反対方向なのに送ってくれて優しい人だと思ってこの日から裕太とは話すようになって大学1年生の夏に付き合い始めた。
そこから交際は順調であっという間に大学4年生になったある日に、裕太から「別れたい」と言われた。
理由は、建築家を目指すためにフランスに留学に行くから離れるから。
「遠距離でも私はいいよ」と言ったら、
「それだけじゃない、もう俺お前に飽きたんだよ、それに別の女好きになったから」
この言葉が突き刺さった。矢で心臓を撃ち抜かれ動かなかった。
失恋して、毎日泣いて泣きまくって、立ち直った頃には教師の仕事に集中しようと決めた。
それから2年後。私は颯に出会い、付き合っているというのに、元カレからの電話。苦くて思い出したくもない裕太からの電話。
「俺、フランスから帰ってきた」
「それで?」
「会いたい」
「会いたい」この言葉で3年間付き合った過去がフラッシュバックされる。私が会いたいと言っても会ってくれなかったよね、バイトがある、ゼミがあるとかで。殆ど嘘で実は別の女と会ってたんだよね。今は反対の立場になってる。
「今さらやめて、会う理由なんかない。」
「俺にはある。」
「それでも会いたくない」
「明日11時に大学の時よく行ってたカフェで待ってる」
電話が切れた。初めて後悔する。
電話番号変えておけばよかった。と。
連絡先は消したけど、電話番号は変えていなかった。もしかして裕太の連絡先には私の電話番号ずっと残ってたのかな…、好きな女出来たくせに。
「美波?」
「わぁ!どうしたの?」
「どうしたって何回言っても美波ずっと電話見てるから」
「ごめん、もう入るね」
結局、颯と一緒にいたけど、頭の中は裕太との苦い思い出と明日のことでいっぱいだった。


