次は山本くんの部屋。


流石に心配。颯があんな状態じゃ、山本くんも相当やられてるだろう。


インターホンを鳴らして、暫く経ってから入っていいと言われて部屋に入る。



山本くんの方が酷かった。


右目が腫れていて、膝に大きな痣。しかも鼻の骨を骨折、歯も奥歯が抜けたらしい。


2人ともやり過ぎ。もうそれしか言えない。2人も族に入って、族代表で闘ったんじゃないかって錯覚してしまう。でも違う。2人の親はお偉い方なんだから。



「大丈夫じゃないよね……」


「まぁまぁ痛い、心配で来たんか」


「そりゃ心配するよ」


「安静してれば治る、西野は大丈夫か?俺の前に会ってきたよな?」


「……会ってきたよ、西野くんも目は腫れたし山本くんとおんなじくらい酷い」


「俺のこと、嫌いになった?彼氏があんなにボコボコになったから」


山本くんは薄ら笑いしながら聞いてきたけど、何処かで悲しみや寂しさがあるのだと思う。


「2人ともボコボコになったじゃん」


「まぁな、小さい時からずっと俺の上で嫉妬で嫌いになった時あったけどよ、、、100%で嫌いにはなれないんだよな、あいつの苦労も知ってるから」


「そうだと思った」


「は?」


「100%嫌いだったら、今日まで一緒に友達としていないよ、それにいじめも助けたりしない。山本くんは小さい頃に抱いた羨望や嫉妬よりも西野くんにすごいな、とか守ってあげたい友達と思う友情の方が割合的には大きいんじゃない?」



「……そうかもな、まさか好きな人が一緒でもう付き合ってると思わんくてまたかよ……ってその時だけ憎たらしく思っただけかも、日常的には考えてねえから、幼少期の事とか」



友達でもましてや自分に対しても気持ちに素直に飲み込めないことはある。山本くんは今、素直になれたと思う。


「もう昨日のような大喧嘩はしねえよ、流石に痛みが長引きそう」


「本当にやめて!」


「…アハハ、分かったよ。でも殴り合いしてる時ずっと言ってたぜ、『七瀬美波は渡さない』ってさ、相当好きなんだな、俺、びっくりしたしずっと言うからもう諦めるわ」


「…え?」


「西野に負けたとか思わないから、七瀬は西野の方が似合うしな。」


「それにな………あいつが女を好きになるのは初めてなんだよ……モテてるくせに」


ボソボソっと呟く山本くん。


「え?そうなの?」


「あいつ人間不信になった時もあったしいろいろ苦労してるからな、そういう奴が好きになったのが七瀬だからな……俺が引くしかないよなーー」



山本くんには西野くんに負けないものを持ってる。自信を持ってこれから自分の道を進んでって欲しい。そして、私と颯の恋も見守ってもらえたら、と思う。



「山本くん、ありがとう」


「ありがとうとか言うなよ、俺だって軽い気持ちで好きになったんじゃねーから、諦めるのしんどいわ」



「痛みが酷くなったら、私呼んでいいから」


「いきなり襲ってもいいってこと?」


「そんな意味じゃない!担任としてだからね!」


「分かってるよ、でも最後に」


山本くんは、私を引っ張って、山本くんの中にすっぽり入ってしまった。


「しばらくこのままで」


しっかりした体つきで筋肉質な山本くんの体は頼もしかった。何分経ったかわからないけど、体内時計では長く山本くんの中にいたと思う。


「ありがと、絶対西野を離すなよ」


そう言って山本くんはもう寝る!と言い布団を被った。