最悪。
そう、隣から聞こえてきた。
どうやらテストの結果が最悪らしい。
隣に座る津々浦うららが可愛い顔をしかめている。
ついでに、俺のテストも最悪だ。
そっとうららのテストを見ると81点だった。俺は79点。くそう、負けた。

「ねぇ、愛希は何点だった?」
ついにその質問がきたか。
「79点だよ。そっちも最悪なんだろう」
「まぁね。最悪だけど、愛希よりは最悪じゃないのが救いだよ」
そう言って、少し笑った。
何にせよ、うららが少しでも救われたのならよしとしよう。

今返ってきたのは国語だ。
国語といえば、そこまで勉強しなくても点数が取れるとクラスの奴らが言っていた。
そして、あと4教科。
国語がこれなんだ、きっと他のテストも最悪だろう。
最悪だ。
面倒くさいことに俺は学級委員長になってしまっている。
別にやりたかったわけでもないが中高一貫のこの学園では、中学1年のときに入った委員会は高校生になってからも同じ委員会に入らなければいけないという謎ルールがあった。
中学生になったばかりのとき、真面目そうだからと、学級委員長に祭り上げられた俺は今でも学級委員長だ。
クラスの雑用係みたいなものだ。
それに、福学級委員長という役割は存在しない。
隣のうららは飼育委員会に入っている。
飼育委員会には昆虫もいるから、うららは虫ごときで怯える女子ではなくなった。

「愛希は学級委員長なのに情けないなぁ」
「ほんとそう」
「クラスの平均点下げたの、絶対私達だよね」
そのせいでクラスの大半がご立腹だ。
クラス替えのないこの学園ではジンクスみたいなものがあって、1組には成績のいい生徒が不思議と集まっているという。
なので皆自分の成績に自信があるらしく、平均点が下がるのを嫌がるやつが多い。

学園の食堂はいつも賑わっている。
中等部の生徒も高等部の生徒も集まっているせいだ。
結局、あのあと返ってきた数字と理科は予想通り最悪だった。
うららも最悪だった。
ここの食堂のものはうまい、特にカレーが。
値段が高いのが難点である。
うららは飼育委員会の仕事があると行ってしまった。
俺が仕方なく1人でカレーを食べていると、1人の女子が近づいてきた。
同じクラスの幸門りいなだ。