「な……なに……? その『ありがとう』は……」


 光くんは少しオロオロとしていた。


「あっ、別に深い意味はないよ。ただ『ありがとう』と言いたかっただけ」


「……そうなんだ……オレ、なんかもっと違う意味に……」


「違う意味って……?」


「……いや……なんていうか……」


 光くんは少し困った様子だった。

 そんな光くんの少し困った様子がなんか可愛く感じて……。


「光くん」


「……梓……そんなに笑うなよ」


「だって……」


 光くんと一緒にいると私は自然に笑顔を出すことができる。

 私はいつの間にか光くんのやさしさに救われていた。

 いつからだろう……そう、きっとあの頃から……初めて光くんと出会ったあの日……紙飛行機が腕に当たったあの日から私は光くんに救われていたんだ……。


「……梓……?」


「光くん」


「うん……」


 なんか光くんが……。


「……なんか固まってない?」


「……いや……その……」


 少し緊張している光くんも可愛く感じる。


「……友達……」


「え……?」


「……まずは……友達……から……」


「梓……」


 光くんは名前を呼んだ後、無言になった。


「……光くん……?」


 私はそんな光くんを見てどうしたらいいのかわからなかった。