「梓……」


 え……。

 私は驚きのあまり一瞬声が出なかった。

 一瞬……なはずなのにその時間がそれ以上の長さに感じた。

 私は振り絞るかのように……。


「光くん……」


 やっとの思いで声を出した。

 やっとの思いで「光くん」と言ってから一瞬しか経っていないと思うのだけど、やっぱりそれ以上の長さに感じた。

 ……光くん……。

 どうしよう……。

 光くんは黙ったまま。

 どうしよう……どうしよう……。

 私は今が光くんにあの日のことを謝るチャンスだと思った。

 ……でも……でも……その勇気がない……。
『ごめんね』
 ……その一言が……その一言が……。