死ぬのは溺愛のあとにして?【加筆終了1/1】


『――拒んだら、どうなるかわかるよね?』


近づく顔にゾワゾワと全身が拒否反応を示した⋯⋯。

怖くなった私は泣きながら加藤先生を、突き飛ばしてその部屋を飛び出てしまったのだ。

恐怖を感じたのは私の方なのに――


「⋯⋯悪いが今日付けで退職ということで」


部長の言葉が冷たく突き刺さる。

冗談じゃないよ⋯⋯


「納得がいきません。なら部長は、加藤先生の誘いに応じるべきだとでも言うんですか? それこそ会社としてどうかと思います」


おかしい、おかしいよ。

誰がどう見ても悪いのは向こうだし、相手が権力や財力を持っていたとしても、見誤ることはしてほしくない。

私は自分を疑わなかった。


なのに―――


「⋯⋯机の上片付けておけよ。悪いが、社員寮も数日中にでるようにな」


聞く耳も持たない部長は、退職に関する資料をデスクに投げると、そのまま会議室を出ていく。

バタンと、扉が悲しく閉まった。