そして、左手の甲に柔らかな唇をあてたまま
「あすみ⋯⋯僕のお嫁さんになって」
サラリと、とても大切なことを口にした。
「⋯⋯え?」
聞き間違え?
思わず聞き返してしまった。
だけど私を見下ろすのは、真顔だけど真摯なアーモンド型の瞳で、彼の気持ちが本物であることが知らされる。
富丘くんは、本気だ。
もちろん、嘘なんか言う人じゃないのは知っていたけど、あまりにも唐突で腰を抜かしそうだった。
けれども、どんな難題が振りかかろうと『富丘くんにぜんぶあげるよ』と約束した私は、それに応えると決めていた。
「⋯⋯富丘くんは、それでいいの?」
念の為、彼の決意を再確認してみると
「君の未来が欲しい。今は、ただの同期としか思えないかもしれないけど。でも⋯⋯君に好きになってもらえるように頑張るから、傍にいてほしい」
胸を撃たれるほど真っ直ぐなセリフで返されてしまった。
「富丘くん⋯⋯」
そして、さらに続いた。
「この恋が終わりかと思っていた僕の前に⋯⋯生死を迷う君が現れた。僕は、これを運命だと思ってる」
「運命⋯⋯?」



