「おはよ、あすみ」


腕の中で硬直する私にもういちど挨拶をしてくれる。

彼がこんなに甘やかすような顔で名前を呼ぶなんて、誰か想像できるだろう。


心臓が⋯⋯大暴走する。


造形物のような美しさに、見惚れてしまいそう。


「お、おはよ⋯⋯」


消えそうな声で返すと、自分の頬が朱色に染まるのが分かる。


「顔真っ赤⋯⋯かわいい」

「かわいくなんか⋯⋯ないでしょ」


今までそんなこと、言ったことないくせに⋯⋯。

彼はアーモンド型の切れ長の瞳を緩ませると、私の長い髪を整えるように梳く。

こんなに綺麗な人が⋯⋯ずっと私を好きだったなんて、信じられない。

そしてすっかりと自分の中の、癒えようのないと思い込んでいた傷口が、小さくなっていることに気づいた。


でも、この先、どうするんだろう⋯⋯。