そして――

宣言通り、富丘くんは一度だけ私を抱いた。

普段の冷静さや、クールなんて塵も感じないくらい情熱的に私を求めて。

柔らかい唇と指先で丁寧に私をほぐして、そして焦ったように身を沈めると、ヒロキとの記憶を消し去るようにゆらゆらと揺さぶった。

身体を焼き尽くしそうなほど激しい行為なのに、その指先はガラス細工にでも触れるかのように優しくて。

はじめて触れた彼の熱に、感動のあまり私の目からは涙が流れた。


「泣かないで⋯⋯ごめん、もう、やめられない」

「ちがっ⋯⋯こんなに、優しいの、はじめてで」


そう告げると、富丘くんは一瞬苦しそうな顔をしたあと、考える余裕を奪うかのように滑らかに動いた。

心を通わせようとしてくれるのが伝わってくる。

愛のある行為というものを、はじめて知ったような気がする。

ヒロキが、私を愛していなかったことを、ここでも思い知ってしまった。


冷え切った心に、富丘くんの優しさが染み渡って、


それでもって、私よりも大きな身体は、愛を欲しがり、求めて触れてくる。


何度もキスをくれる唇は、飽きもせず愛をささやいて⋯⋯


嫌じゃない。ぜんぜん。


むしろもっと⋯⋯もっと愛して欲しい。