全体的に黒を基調としたモノトーンで、家具の少ないシンプルな部屋。

冷静でクールな彼らしい部屋だと感じた。

これまでにあった扉の数からすると、2LDKほどの物件だと思う。

部屋にはいると、私の存在など気にも止めないようにキッチンに向かった彼は、「コーヒーでいい?」問い、私が頷くと淡々と準備をはじめた。


営業部のエースであり、それに加えて眉目秀麗といった非の打ち所がない富丘くん。

私の知る富丘くんは、いつも冷静沈着で真顔で、

あんなに必死に手を伸ばすような姿は、見たことがなかった。

みんなを魅力する美貌をもってるくせして、社内でも浮いた噂ひとつない彼は、恋愛対象が男性なのでは?とも囁かれていたくらい真面目。

そんな彼が⋯⋯

一体、どんな『提案』を持ち出すというんだろうか。

普段ポーカーフェイスの彼が、あそこまで感情をあらわにしてここまで連れてくる理由が、気になってしまった。